コーナー: 定点磨き
靴: エドワードグリーン / ドーバー(スエード)
作成日: 2026-07-06
カテゴリ: 靴
タグ: #靴 #靴磨きレポート #定点磨き #エドワードグリーン #ドーバー #スエード
このページは、私が持っている一足を手入れするたびに追記していく定点観測の記録だ。情報記事ではない。経年変化を細かく追うための、半分日記・半分カルテのようなものだと思ってほしい。
この一足のカルテ
- ブランド/モデル: エドワードグリーン ドーバー(外羽根スプリットトゥ)
- 革/色: スエード/ダークブラウン
- 推定: 旧工場期(窓なし)
- 入手: 中古
- この靴の立ち位置: ”スーツに合わせられるUチップ”の王。旧工場✖︎33ラストという要素モリモリの一足

旧工場と呼ばれる理由
エドワードグリーンは1890年、ノーサンプトンで始まった。
1977年にアメリカ人実業家へ売却され、経営は揺れた。
1982年、イタリア出身のジョン・フルスティックが負債ごと1ポンドで引き受けたエピソードは有名だ。
ジョンロブ・ロンドンは元来ビスポーク専業だったが、経営難の末エルメスの資本を受け入れた。
エルメスの方針で規制靴ライン(いわゆるジョンロブ・パリ)が立ち上がり、当初の製造委託先にはクロケット&ジョーンズが入った。
この話自体は、ノーサンプトンの靴業史を読むと何度も出てくる。
その後、エルメス側はエドワードグリーンの工場を買い、そこでジョンロブ規制靴の生産を行う形になった。
クロケはこの辺りの歴史からすでに面白い。OEMファクトリーから始まり、ジョンロブの委託を経て直営店を持つようになり、今では工業化を進めて安定した品質を10数万円〜で量産する賢いブランドになっている。
個人的にはあの機械感の強いスタンプはテンションが上がらないが、いろんなブランドが革質を落としている中でかなり質を保っていると思う。
1990年代前半、エルメスはブランド存続をめぐってエドワードグリーン側と衝突し、工場と設備の多くを手元に残したまま、ブランドは別拠点へ移った。
旧工場製、現行製で語られる所以はここにある。


私のこの一足がどの年のものかまでは判断がつかないが、窓なしの時点で旧工場とのことなので、旧工場製は確定する。
現行品は店頭で見るだけなのでなんとも言えないが、質については現行も旧工場も良すぎて判別できる自信はない。
だが、新品32万円が妥当なのかは疑問が残る。その金額なら日本の有名職人さんにビスポークを頼む方が賢い選択に感じる。
ラストについて、この靴は33ラストと珍しいようだ。
王道の32ラスト(ドーバー専用)のようなポインテッドトゥではなく、やや角が張ったセミスクエアトゥになっている。
スエード素材というのもあり、スーツ特化ではなくジャケパンで本領を発揮する靴だろう。
良い物を少ない数つくる業態は傾きやすいのは理解できるが、その後ハイブランドの資本によって建て直しつつ、儲けのためのコストカットがされていく様子は見ていられない側の人間だ。
エドワードグリーンは何度か建て直し、今もノーサンプトンにいる。
プレミアなし、オーダー制作でもない既製靴で30万オーバーは流石に手が出ないが、本物を作り続けている好印象なブランドだ。
これまでの歩み(年表)
- 2026-07-06 … 定点磨きページ開設。コロンブス スエードモイスチャーリキッド+スエードブラシで初回手入れ。←今ここ
観測ログ(新しい順)
2026-07-06 | 初回(コロンブス手入れ)
今回やったこと: 乾いた汚れをブラシで払う → スエードモイスチャーリキッドを薄く付与 → ブラシで毛並みを立て直す → 陰干し
使ったもの: コロンブス スエードモイスチャーリキッド/コロンブス スエードブラシ(豚毛)

スエード靴のメンテはスプレーのみという情報が多いが、保湿もしたい派なので今回はリキッドをしっかりと浸透させていこうと思う。
手元の状態
ダークブラウンのスエードだが、光の当たり方で色が変わる。
トップライトだと焦げ茶、横光だと少し赤みが出る。
旧工場ドーバーの売りは、この手縫いエプロンの立体感だ。
写真で平らに潰すと、ただの茶色いスエードに見えてしまう。
インソールとシューツリー
インソックのスタンプはポールセンスコーンで、ジャーミンストリート創業の歴史あるビスポークシューズブランドだ。
既製靴はEGやクロケが作っており、マイナーな刻印だが超高品質確定のブランドだ。
シューツリーはエドワードグリーン純正の木製。銘板に「EDWARD GREEN BOOTMAKERS NORTHAMPTON」と刻まれている。
中古で靴だけ買って、ツリーまで揃うことは多くない。
のだが、実はドーバーには形が合っていない。見た目は大事なので撮影用に純正を入れているが、保管時はスレイプニルのをバネ調整して入れている。
(EGのツリーはオールデンのハンプトンラストがピッタリだったのでそちらに入れている。)

ソールまわり
前足部には黒いラバーのハーフソールが貼ってある。
踵は鳩尾(ダブテール)で、後角にラバーインサート。
ヒールトップリフトは中古購入後一度してもらったため減りはほとんどない。
ソール中足部の革はまだ厚みがある。
刻印は浅いが読める。
7/7追記
ソールモイスチャーを購入したので、次回試してみる予定だ。


手入れの手順(今回やったこと)
- ブラシで表面のホコリと乾いた汚れを払う。エプロンの縫い目沿いは念入りに。
- スエードモイスチャーリキッドを塗る。
- 付与直後にブラシではなく、今回は布(オックスフォード生地のシャツ)と指で均した。
スポンジの真ん中の穴から保湿液が出てくる仕組みで、どうやってもムラができる構造だったため、手早く均しながら塗った。 - 風通しのいい日陰で半日ほど乾かす。乾燥機や直射日光は避けた



結構びちゃびちゃに見えるが、これ以上薄く塗れなかった。
今回はヴァンプとトップラインを中心に入れた。

概ねいい感じなのだが、コバの際まではスポンジで濡れなかった。
スプレーの有能さを思い知った部分でもある。
カーフレザーであればペネトレイトブラシで隅まで濡れるのだが、スエードだとそうはいかなかった。
何か方法を考えて次回試そうと思う。
気になっている箇所
踵の外側に、毛並みが潰れて光る擦れがある。
ブラシだけでは完全には戻らなかった。
リキッドを局所で重ねるか、そこだけ別処理にするか、まだ決めていない。
スエードの定点観測で最初の未解決課題はここだ。

差分メモ:
- 色: 乾燥気味だった毛並みに、わずかに深みが戻った印象(劇的変化ではない)
- 毛並み: ヴァンプは立ち上がり、踵カウンターは擦れが残存
- ソール: 変化なし(次回は革ソール部分の保湿を別途検討するかもしれない)
次に考えていること
頻度は月1回か、雨の日に履いた直後か、のどちらかで試すつもりだ。
踵の擦れが次回も残るなら、リキッドの局部投入か、プロのスエードケアに頼むかを判断する。
旧工場の話を長く書いたが、メンテ自体には関係ない。どうせ高い物を使うなら歴史があって何か感じ取れる気がする物の方が楽しいから書いてみた。
次のログでは歴史に触れずレポートだけにする予定、踵の擦れや深くなった色味ががどう動くかを見に来てほしい。
写真コーナー









参考・関連
- ファクトリーブランドの経営難&買収による質の低下について
- タニノクリスチーの茶靴を磨き続ける ― 色ムラ失敗と、その回復の記録(定点磨き・スムース革の別足)